2013年2月23日土曜日

WindowsストアアプリとWindowsデスクトップアプリの使い分け


Windows8からアプリケーションの種類に、従来からあるアプリの「デスクトップアプリ」の他に、「Windowsストアアプリ」(旧Metroスタイルアプリ)が増えました。

しかし、必ずしも全てのアプリをWindowsストアアプリで開発する必要はなく、今後もアプリの内容に応じてデスクトップアプリとWindowsストアアプリを使い分けるべきとMicrosoftは言っています。

何を基準に使い分けるのか、その説明が非常に分かりにくいため、整理してみました。

【開発者の観点から見た使い分けの基準】
  • Windowsストアアプリ
    • ストアでのアプリ配布を行える ※デスクトップアプリもストアで紹介のみは可能
    • マネタイズができる ※アプリの有償販売、課金、アプリ内広告配信が可能
    • カメラやGPSなど、デバイスの機能を簡単に利用したい
    • スワイプやピンチズーム等、タッチ操作を生かしたアプリを楽に開発したい
    • WindowsRT(ARM版Windows)にも対応したい
    • HTML/CSS/JavaScriptを使って開発したい
  • デスクトップアプリ
    • 既存の資産を生かしたい。
      • 既存のロジックやライブラリ(有償、無償)をそのまま利用したい。
      • WinフォームやWPFを使って開発した既存アプリを作り直したくない。
    • スキャナなどのWinRTでは対応していない周辺機器を扱いたい。
    • Windows7などにも対応したい。

【注意事項
  • そもそも、Windowsストアアプリやデスクトップアプリで開発せず、Webアプリケーションとして実装することも選択肢の一つ。
  • Windowsストアアプリ(WinRT)は、iOSアプリによく似ている。
    • セキュリティの観点から、アプリにできる機能が大幅に制限されている。
    • 直接アプリ間で通信したりデータを受け渡すことができない。
    • アプリ間の連携は検索やシェア等のOSの機能を経由して行う。
    • ストア公開は審査が必要。ストアに公開せずにアプリを配布することはできない。
  • Windowsストアアプリの場合、アプリの配布が大変。
    • ストアに公開する場合、アカウント登録(有償)や審査が必要。
    • ストアに公開せずにアプリを配布する方法は、企業向けの方法しかない。
      • ストアを介さずに個人を対象にしたアプリを配ることができない。
      • 企業向けには、サイドローディングという方法があるが、これがまた非常に分かりづらい。また、追加ライセンスの購入等、追加出費が必要。
    • アプリはユーザー単位にインストールする必要がある。
      • (従来の)デスクトップアプリでは、一人のユーザーがセットアップすれば他のユーザーも使うことができる。
      • Windowsストアアプリの場合は、1台のPCを複数人のユーザーで共有している場合、ユーザーごとにインストール作業が必要になる。
  • キオスク端末のような、不特定多数が触る端末ではWindowsストアアプリは向かない。チャームやアプリバーの制御ができない(無効化できない)ため。

Windowsストアアプリの場合、注意事項が多くて大変です。

ストアに公開したい、とか、タッチ操作に最適化したい、というような明確な目的が無い限り、デスクトップアプリやWebアプリとして実装した方が無難と思います。

OSはWindows8だけではない訳ですから。

Windowsストアアプリ開発 XAML vs HTML


Windowsストアアプリを開発する場合、開発言語が一つの悩みです。

  • 方法1;HTML/CSS とJavaScript で開発
  • 方法2;XAML と C#、Visual Basic、またはC++ で開発

結論からいうと、業務アプリ開発者(特に.NET/Java開発経験者)にはXAMLが良いかと。
開発言語はC#。

以下、私見。

■方法1;HTML/CSSと JavaScript で開発

  • 概要
    • UI(View)はHTML/CSSで実装する。
    • ロジックを主にJavaScriptで実装する。
  • 適しているアプリ
    • 一般コンシューマー向けのアプリ
      • 完全新規の開発。既存のしがらみが無い。
      • 開発者がHTML/CSS、JavaScript開発に慣れている。
  • 生産性の観点
    • 業務アプリ開発の場合、開発者にまともなJavaScriptプログラミングをできる人はどれだけいるのか、懸念。
      • 例えば、プロトタイプベースの概念を理解している開発者がどれだけいるのか。
      • Javaの開発経験しか無いとしても、C#の方がJavaScriptよりJavaに良く似ているので習熟が容易。Javaの開発経験しかなければ、C#がお勧め。
    • HTML/CSS/JavaScriptに慣れた開発者であっても、MS独自のJavaScriptライブラリ(WinJS) と CSSスタイルセットの学習は必要。
    • VisualStudioだけではGUIを使った画面開発ができない。
      • VisualBasic/VisualStudioを使って画面開発をすることになれた開発者にはデザインが大変。
      • HTML/CSSを手書き、または、BlendやDreamweaverのようなHTMLオーサリングツールを使う必要があるため。
  • その他
    • リバースエンジニアリングされやすい。
      • アプリのパッケージをZip解凍するとソースが丸見え。
      • ソースコード内のコメント行もそのまま残る。(不用意なことを書けない)
      • JavaScriptの圧縮と難読化が必要か。(だが、圧縮&難読化にはリスクあり)
    • ソースコード等の既存資産の流用は大変。
      • 仮に既存のロジックが.NETのクラスライブラリとしてきれいに分離、流用できる状態にあっても、流用は大変。.NETのクラスライブラリは使えないため、Windows ランタイム コンポーネントに移植が必要となるため。
    • HTML/CSS/JavaScriptで行くなら、PhoneGapの活用も要検討?(未調査)

■方法2;XAMLとC#、Visual Basic、またはC++ で開発

  • 概要
    • UI(View)はXAMLで実装する。
    • ロジックをC#(またはVisual Basic、C++)で実装する。
      • 開発言語は特に理由が無ければC#がお勧め。サンプルプログラム等の情報が最も多いため。
      • Visual BasicやC++は実装サンプルが少ないため、C#のサンプルを読解、移植する手間がかかる。
  • 適しているアプリ
    • 業務アプリ
      • .NETで作られた既存のロジックを流用したい。
      • 開発者がC#、Javaなどオブジェクト指向言語の開発に慣れている。
  • 生産性の観点
    • GUI開発がVisual Studioで完結。Blendも複雑なデザインが要らなければ不要。
    • 素のJavaScriptの生産性より、.NET(C#、VB)の方が生産性が高い。
      • Linq、XML、JSON etc.. 豊富なクラスライブラリが標準で使える。
      • 型付言語なのでコードアシスト(intellisense)が強力に効く。リファクタ機能もあり。
      • 非同期処理の実装が楽。 (await/async)
    • 共通部品化(ユーザーコントロール、カスタムコントロール)が簡単。
  • その他
    • 既存の.NETクラスライブラリが利用・流用できる。
      • Windows ランタイム コンポーネントに移植する必要は無い。
      • 既存のロジックがクラスライブラリ化されている場合、あまり修正する必要が無く流用できる可能性がある。
      • ただし、WinRT用の.NETは従来の.NETから機能削減されている機能があるため、一部修正が必要なこともある。


※参考にしたサイト


コメント欄も良く読んだ方が良いと思います。